日本における自己肯定感と自己効力感の課題と背景:自信を持てる社会を目指して
内閣府の「子供・若者白書」や国際的な調査で、日本の子どもや若者の自己肯定感が低いことが指摘されてから、すでに10年以上が経過しています。自己肯定感とは、自分をありのままに受け入れ、自分の価値を信じる感覚のことであり、これが自己効力感(「自分ならできる」と信じる力)を支える基盤になります。自己肯定感が高いことで、自己効力感を高め、未来に向かう力を得ることができますが、日本ではその課題が根深いものとなっている現状があります。
自己肯定感の低さがもたらす影響
経済的に豊かで、選択肢が多いとされる日本ですが、実際には自己肯定感の低さが「自信のなさ」に直結しています。これにより、多くの若者が「自分は大丈夫」「未来を切り拓ける」といったポジティブな感情を持ちにくくなっています。教育改革実践家の藤原和博氏が指摘するように、日本の子どもたちは失敗や叱責を恐れ、叱られないように振る舞う傾向が強く、これが自己肯定感を低下させ、自信を持ちづらい背景を作り出しています。
子どもの成長を支える大人たち、特に親や教育者が「早く、ちゃんとできる、いい子」を求めるあまり、褒めるよりも注意をすることが多いことも、自信の喪失に拍車をかけています。このような環境下で育つと、自然と自信を持つことが難しくなり、自己効力感も高まりにくいのです。
ビジネスパーソンにも見られる「自信のなさ」
大人になっても自己肯定感や自己効力感が育ちづらい状況は続いています。社会に出て働き始めた後も、何度も自信を失う出来事に直面し、それをどのように糧としてリカバーするかが問われます。中でも「インポスター症候群」はビジネスパーソンが自信を持てない一因です。インポスター症候群とは、成功を自分の実力とは思えず、「自分はまがい物だ」と感じる状態です。どれだけ周囲から評価されても、「たまたま運が良かった」「周りの助けのおかげ」と考えてしまい、自信を持てなくなります。
インポスター症候群を克服するための視点
この問題を解消するためには、「成果重視」から「学習重視」への発想の転換が効果的だとされています。心理学者キャロル・ドウェックの研究によれば、成果に焦点を当てる人ほど、失敗を自己否定につなげやすい傾向があります。一方で、失敗を「学びの一環」として捉えることができれば、挫折感ではなく成長の機会として受け止め、自信を育むことができます。
企業が注目する自己肯定感・自己効力感の向上
現代の企業が人材育成において重要視しているのは、能動的に行動し、困難を乗り越える力を持つ「自律型人材」の育成です。自己肯定感や自己効力感を高め、失敗を恐れず挑戦し続ける社員を育てることで、組織全体の活力を高めたいという狙いがあります。こうした姿勢を持つ企業は、社員のメンタルヘルスやストレスマネジメントにも力を入れ、豊かで幸福な働き方を目指しています。
まとめ
自己肯定感と自己効力感の低さが日本社会で課題となっているのは、子どもの頃からの教育環境や、働く現場での厳しい評価基準によるものが大きく影響しています。しかし、これらの力を高めることは可能です。過去の成功体験を振り返り、失敗を成長の機会と捉えること、周囲の評価ではなく自分の価値をしっかりと見つめ直すことが重要です。こうした考え方の変化が、より良い未来を切り拓く鍵となります。この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。