民間銀行が貸出しを行う際、そのプロセスでは「無から貨幣（預金）」が創造されます。貨幣創造の仕組みを理解することは、経済全体の動きを把握する上で重要です。このプロセスを簡単に説明すると、以下のような段階で進行します。
1. 貨幣創造の起点：資金需要の発生
企業が新たな事業を行うために資金を必要とする場合、これが貨幣循環の出発点となります。この資金需要は、例えば新しい設備の購入や原材料の仕入れ、あるいは従業員への賃金の支払いといった形で現れます。
民間銀行が注目するのは、企業の返済能力です。企業がその資金を活用して事業を成功させる見込みがあれば、銀行は貸出しを行い、貨幣を創造します。この時点で、民間銀行は実際の現金を動かすわけではなく、単に企業の口座に預金額を記帳するだけです。
2. 貨幣の循環
創造された貨幣は、企業が事業活動を行うために使われます。この支出は、以下のような形で経済の中を循環します：
- 原材料や設備の購入：取引先企業に貨幣が渡ります。
- 従業員への給与支払い：家庭に貨幣が流れます。
こうして、企業から始まった貨幣の流れは取引先や労働者に届き、彼らもさらにその貨幣を使って消費や投資を行います。このようにして、貨幣は経済全体を巡り、取引を活性化させます。
3. 収益の獲得と貨幣の回収
企業は、事業活動を通じて収益を得ます。得られた収益は、以下の用途に使われます：
- 新たな投資への再投入
- 借入金の返済
特に借入金の返済においては、重要な現象が起きます。企業が銀行に返済を行うと、その分の貨幣（預金）は消滅します。これが「貨幣破壊」と呼ばれるプロセスです。
4. 貨幣循環の終点：貨幣破壊
貸出しが「貨幣創造」であるならば、返済は「貨幣破壊」となります。民間銀行が創造した貨幣は、借り手の返済によって消滅し、経済全体の貨幣供給量が減少します。このプロセスにより、貨幣の循環が一つのサイクルとして完結します。
貨幣循環の意義
貨幣循環は経済活動のエンジンと言えます。企業が資金を借りて事業を展開し、その資金が経済全体を巡り、最終的には銀行に返済される。この循環がスムーズに行われることで、経済は成長を続けます。
- 貨幣創造は経済活動の拡大を支え、
- 貨幣破壊は過剰供給を防ぎます。
つまり、経済全体のバランスを保つために、企業の資金需要、銀行の与信審査、そして貨幣循環が適切に機能することが求められます。
このメカニズムを理解することで、経済政策や金融政策がいかに重要か、またそれがどのような影響をもたらすかをより深く認識することができるでしょう。
