ビールは「発酵」によって味わいが変わる?<1>【上面発酵の世界を探る】
ビールは麦やホップなどを主原料とし、糖類を酵母が分解する**「発酵」という工程によって生まれるお酒です。その発酵方法には「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3種類があり、どの発酵方法を採用するかによって、味わいや香り、個性が大きく変わります。今回はその中でも、特に歴史のある「上面発酵」**について解説していきます。
上面発酵とは?
上面発酵は、発酵が進むと酵母が麦汁の表面に浮かび上がるという特徴を持った発酵方法です。この発酵では、15~20℃という比較的高めの温度で行われ、3~4日間という短い期間で発酵が完了します。
この上面発酵を採用したビールは、**「エール」**と呼ばれるスタイルに分類されます。エールは長い歴史を持つビールで、イギリスやベルギーを中心に世界中で親しまれています。
上面発酵ビールの特徴
上面発酵で作られるビールには、次のような特徴があります。
1. フルーティーで多様性のある味わい
上面発酵ビールは、フルーティーな香りと味わいが特徴です。発酵中に酵母が作り出すエステル類が、果物のような風味を生み出します。また、地域や醸造方法により、香りや味わいに幅広いバリエーションがあるのも魅力のひとつです。
2. 地域の風土や文化が反映された個性
長い歴史の中で、各地域の風土や生活文化がビール作りに反映されてきました。そのため、上面発酵ビールには、地元の特産品を使ったものや伝統的な製法を守るものなど、ユニークな個性を持つビールが多く存在します。
3. 10℃以上で楽しむ芳醇な味と香り
冷たいビールは「キレ」や「ノド越し」を楽しむのに適していますが、上面発酵ビールは10℃以上に温度を上げることで、その芳醇な香りと深い味わいをじっくり堪能することができます。
代表的な上面発酵ビールの種類
上面発酵ビールには、さまざまなスタイルがあります。以下はその代表例です:
- エール:伝統的なイギリスのビール。フルーティーな香りとまろやかな味わいが特徴。
- IPA(インディアペールエール):ホップの香りと苦味が強調されたビール。
- ヴァイツェン:ドイツの小麦ビール。フルーティーでバナナのような香りが特徴。
- スタウト:黒ビールの一種で、焙煎された香ばしい風味が特徴。
- トラピストビール:ベルギーの修道院で作られるビール。濃厚でリッチな味わい。
代表的な上面発酵ビールの銘柄
- クローネンブルグ ブラン(フランス)
柑橘系の爽やかな香りが楽しめる、飲みやすいエール。 - サミエルスミス スタウト(イギリス)
濃厚なコクと焙煎香が特徴的な黒ビール。 - ヴァイエンステファン へフヴァイス(ドイツ)
世界最古の醸造所から生まれる、バナナのような香りが楽しめるヴァイツェン。 - シメイ ブルー(ベルギー)
濃厚な味わいとフルーティーな香りを兼ね備えたトラピストビールの名品。 - 白濁(ベルギー)
ホワイトビールの代表格で、やわらかな酸味と香りが特徴。 - IPA 100(イギリス)
ホップの個性が際立つ、苦味と香りのバランスが良いIPA。
まとめ:上面発酵ビールの楽しみ方
上面発酵ビールは、そのフルーティーな香りや個性豊かな味わいが魅力です。香りをしっかり楽しむために、適温で味わうのがおすすめ。次回ビールを選ぶ際には、エールやIPA、ヴァイツェンなどの上面発酵ビールを試してみてはいかがでしょうか?その芳醇な味わいと香りが、新たなビール体験を提供してくれるはずです!