日本の経済政策は、どこか根本から歪んでいる。
長年、漠然とそう感じてきた人も多いだろうが、その違和感には明確な理由がある。
そして、その理由を知ることで、「なぜ給料が上がらないのか」「なぜ物価ばかり上がるのか」といった疑問の答えが見えてくる。
今回は、日本経済が30年以上停滞し続けてきた原因と、私たち一人ひとりが知っておくべき「お金の本質」について、根本から掘り下げていく。
これを知ることが、未来の日本を変える第一歩になる。
経済政策が僕たちの暮らしに直結している理由
これまで投資について学んできた人も多いだろう。
しかし、経済政策についてはあまり意識してこなかったかもしれない。
実は、経済政策が適切に機能すれば、日本経済は成長し、私たちの給料も増え、株価も上昇していく。
一方で、政策運営に失敗すれば、どれだけ投資を頑張っても、景気が停滞し、給料も上がらず、株価も伸び悩む。
つまり、経済政策は私たちの生活に直結している。
投資の勉強と同じくらい、政策に対する知識も必要なのだ。
アベノミクスの評価——三本の矢は本当に放たれたのか?
2013年から始まった「アベノミクス」。
第2次安倍政権下で掲げられた三本の矢は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の3つだった。
まず、「金融緩和」については、一定の効果があったと言える。
日銀が大量にお金を刷り、金融市場に資金を供給した結果、株価も上昇し、円安も進んだ。
だが、2本目の「財政政策」はどうだったか。
実際には、消費税を2度も引き上げるという真逆の政策が行われた。
景気を支えるどころか、国民の負担を増やす方向に舵を切ってしまった。
さらに、3本目の「成長戦略」も、具体的な成果にはつながらなかった。
結果として、「三本の矢」は放たれたどころか、自分自身に突き刺さるような形で終わってしまった。
もし、金融緩和と並行して財政政策も積極的に行い、成長戦略が実行されていれば、日経平均株価は5万円、6万円に達していた可能性もあった。
だが、現実はそうならなかった。
最大の要因は「財政政策」の失敗である。
景気が低迷している時に消費税を上げる——。
これほど誤った選択はなかった。
では、なぜそんなことが行われたのか。
インフレにも種類がある
近年、「インフレ」という言葉をよく耳にする。
物価が上昇する現象だが、実はインフレには2種類ある。
1つは「ディマンドプル型インフレ」。
需要が旺盛で、「欲しい」と思う人が多いために価格が上がる。
もう1つは「コストプッシュ型インフレ」。
原材料費やエネルギー価格が上昇し、コスト増加分を転嫁することで物価が上がる。
現在の日本は後者、コストプッシュ型インフレである。
例えば、ロシア・ウクライナ戦争で小麦価格が高騰し、原油価格が上昇すれば、輸入に頼る日本は大打撃を受ける。
本来、コストプッシュ型インフレが進行する場合、政府は減税や社会保険料引き下げで国民負担を軽減し、金融政策では金利を引き下げるなど、企業活動を支援すべきだ。
ところが、日本政府は逆の政策をとっている。
2024年、日銀はゼロ金利政策を解除し、その後、追加利上げまで実施した。
物価高で苦しむ国民にさらに負担を強いる政策だった。
「骨折している人に風邪薬を渡しているようなものだ」と批判される所以である。
「国の借金」という呪い
政府は財政赤字を理由に増税を正当化する。
「国の借金がGDPの2倍以上あり、日本は借金漬けだ」という話もよく耳にする。
だが、この「国の借金」という表現自体が誤解を招いている。
本来、政府の債務残高とは、「過去に発行したお金の累積記録」にすぎない。
経済が成長すれば、お金の量も増えて当然だ。
日本の場合は経済成長が停滞しているため、「債務残高の対GDP比率」が高く見えているだけである。
成長さえすれば、債務残高の割合は自然と低下していく。
スペンディングファースト——正しい財政運営の原則
重要なのは「スペンディングファースト」という考え方である。
国は税金を集める前に、まず支出し、経済を回していくことが基本だ。
例えば、国ができたばかりの時を想像してほしい。
王様が「橋や道路を作れ」と命じても、お金がないのにどうやって作るのか。
そこで、王様が貨幣を発行し、人々に支払う。
これが「政府支出の原点」である。
税金は、インフレを抑えるために回収する役割を果たす。
つまり、「財源を確保してから支出する」のではなく、「必要な支出をしてから、過度なインフレを抑えるために税金を徴収する」のが本来の姿だ。
しかし、日本政府は増税で財源を確保してから支出するという「逆の発想」に囚われている。
その結果、必要な投資は遅れ、経済成長の芽を自ら潰してきた。
投資不足が招いた「脆弱な国」
日本は30年にわたり、必要な分野への投資を怠ってきた。
例えば、「食料自給率」。
現在、日本の食料自給率は約38%にすぎない。
輸入に頼る体制は極めて危険だ。
有事や輸出規制で輸入が止まれば、日本は1~2カ月で食糧難に陥る。
また、インフラも老朽化している。
戦後に整備された橋や道路、トンネルの多くが耐用年数を超えた状態にある。
さらに、科学技術や教育、エネルギー開発分野でも、国際競争から取り残されている。
本来、国が成長するためには、未来への投資が不可欠だ。
ところが、日本は「財源がない」という思い込みから、投資を抑え、国民から税金を絞り取る政策ばかりを進めてきた。
この結果、国力は衰え、国民生活も疲弊している。
経済政策を変えるために、私たちにできること
結局のところ、政治家任せでは日本は変わらない。
国民一人ひとりが「お金の本質」と「正しい経済政策」を理解し、声を上げる必要がある。
その第一歩が、「スペンディングファースト」という考え方を知ることだ。
経済を成長させ、豊かな暮らしを取り戻すために、まずは「知る」ことから始めてみてほしい。