老後に向けて頑張るほど税金が軽くなる構造
iDeCoを簡単に説明すると、
税負担を軽減することにより、
老後資金の積立てを支援する仕組みです。
つまり、
iDeCoは公的年金制度を補完するために
個人が任意で老後のための資金を積み立てやすくする
広義の年金制度と言えます。
iDeCoに加入すると、
自分専用のiDeCoの口座が開設され、
そこに毎月、老後のための積立てを行っていくことになります。
このとき、
iDeCoに積み立てた掛金額については、
所得税や住民税を計算する際の
所得(課税所得)に含まれずに済みます。
これは、
iDeCoを利用しないで普通に
貯金で積み立てる場合には得られないメリット
となるわけです。
また、
利息や運用によって得られた収益について
課税されないのもiDeCoの大きなメリットです。
普通であれば預金利息には
原則20%の税金がかかりますし、
リスクを取って得られた株式などの
売却益にも20%課税されます。
ただ、
iDeCoではこれらがすべて非課税となるため、
効率的に老後に備えることができます。
受取時も優遇税制が用意されています。
老後に備える方法として魅力的なiDeCoですが、
これまでは公務員や専業主婦(国民年金の第3号被保険者)など、
利用できない人がいたわけです。
ただ、法律が改正され、
働き方などによって毎月積み立てられる
上限額は違うものの、2017年1月から、
60歳未満の現役世代なら原則として
誰でもiDeCoを利用できるようになりました。
iDeCoの拠出限度額(2017年1月から)
・専業主婦(第3号被保険者)月額2.3万円(年額27.6万円)
・自営業者等(第1号被保険者)月額6.8万円(年額81.6万円)
・会社員(確定給付企業年金等あり)
企業型確定拠出年金あり月額1.2万円(年額14.4万円)
企業型確定拠出年金なし月額1.2万円(年額14.4万円)
・会社員(確定給付企業年金等なし)
企業型確定拠出年金あり月額2.0万円(年額24.0万円)
企業型確定拠出年金なし月額2.3万円(年額27.6万円)
・公務員月額1.2万円(年額14.4万円)
※会社がiDeCo加入を認めている場合のみ加入可能
iDeCoの特徴の概要
①税制優遇がある
掛金の拠出(積立)、
利息・運用収益、給付金の受取りの
それぞれの段階で税制優遇が受けられます。
②運用方針は、自分で決める
金融機関の選択、毎月の掛金額、
運用配分は自分で決めることが可能です。
③中途解約はNG
原則、60歳になるまで
口座から資産を引き出すことができません。
④口座維持手数料(事務費用)や資産運用にかかる手数料が必要
手数料は、金融機関によって異なります。
⑤受取方法を選べる
年金または一時金の形で受け取るか、
何歳から受け取るかなどを自分で選ぶことができます。
iDeCoに加入から受取りまでの流れ
iDeCoの実施主体は
国民年金基金連合会ですが、
加入にあたって窓口となるのは
iDeCoの口座を開設する金融機関(運営管理機関)になります。
①金融機関を選択する
・都市銀行
・地方銀行
・信用組合
・労働金庫
・生命保険会社や損害保険会社
・証券会社
など多くの金融機関がiDeCoを取り扱っています。
金融機関ごとに
運用商品の選択肢や手数料体系が異なっています。
iDeCoの口座は1人1口座しか開設できないことから、
自分に合ったところを選択する必要があります。
②毎月の掛金の金額と運用配分を決定する
毎月の掛金の金額は、
限度額の範囲で5000円以上1000円単位で指定可能です。
そしてその掛金を提供されている
運用商品ごとに配分します。
配分にあたっては、
・定期預金だけ
・投資信託10本のなかの2本だけ
などのように、
自分でリスクとリターンを考えて
決めることになります。
③加入申込書に記入
申込書に掛金や資産運用の配分のほか、
必要事項を記入して金融機関に提出します。
会社員や公務員の場合は、
給与天引きか自分の銀行口座からの引落しかを選び、
勤務先で在籍証明の書類に押印をしてもらいます
(加入資格の審査のために必要)。
そのため、会社員の方は、
職場の総務などにも連絡を行う必要性があります。
④加入資格の確認と口座開設
国民年金基金連合会で加入資格の審査が行われ、
iDeCoの口座が開設されます。
手続きには1〜数カ月ほど必要です。
⑤掛金の積立開始
手続きがすべて完了すると
指定日(毎月26日)に自動的に
引落しが開始されます。
⑥運用状況を確認する
運用状況については、
金融機関のWEBやコールセンターで
いつでも確認することが可能です。
その結果、資産運用を見直す場合は、
毎月の掛金を配分する運用商品を変える購入指図を出す方法と、
すでに保有している運用商品を
入れ替える売買指図を出す方法があります。
頻度が多い見直しは不要ですが、
運用報告書が年1回は届くのでしっかり自分で確認し、
場合によっては運用商品の選択を変えてみることも必要です。
⑦受取開始
60歳になったら、給付を受けることができます。
受取りのための請求時期や受取方法は
自分で決定する必要があります。
iDeCo加入にあたっての留意点
iDeCoの仕組みがざっとつかめたところで、
独特のルールを確認しておきましょう!
①中途解約は原則NG
iDeCoは税負担を軽減することにより
老後のための資産形成を支援する仕組みであるため、
原則、中途解約ができません。
そのため、
現役時代に必要な資金のための積立てを
iDeCoで行ってはいけません。
目的が異なるからですね。
例えば、
子どもの学費準備に月3万円積み立てている人が、
そのうち1.2万円をiDeCoでの
積立てに回してしまったら、
子どもの学費は将来不足することになります。
利用にあたっては、
マネープランを整理して、
そのお金が老後のための積立てであることを
はっきりさせる必要性があります。
なお、中途解約はできませんが、
積立ての中断や掛金額の変更は
年1回まで行うことができます。
②加入申込み=積立て開始
iDeCoは、一般的に存在してしまっている
【おつきあいで、とりあえず口座開設だけ】
ということはできません。
加入申込み時点で毎月の積立額を決定し、
加入手続きが完了すれば
自動的に引落しがスタートします。
そのため、
金融機関から頼まれてとりあえずのつもりで加入して、
中途解約できないことに気がついて愕然とする、
ということがないように、
納得したうえで制度に加入する必要があります。
③金融機関によってサービスの内容が異なる
iDeCoは国の制度ですが、
どこの金融機関で口座を作るかによって、
手数料体系や運用商品の選択肢が異なることから、
『どこでも同じだ!』
と思って行うことがないように、
確認してから加入したいところです。
iDeCo口座を作るときのポイントは?
どの金融機関でiDeCo口座を作るかなど、
検討のポイントを確認してみましょう!
・事務費用(口座維持手数料)を確認
・運用商品(投資信託)の運用手数料を確認
・運用商品(投資信託)の選択肢を確認
がポイントとなっていきます。
それぞれ確認してみましょう!
iDeCoを利用する場合には、
主な費用として、
- 口座維持手数料(事務費用)
- 資産運用にかかる手数料
の2つがあります。
これらの費用はすべて開示されているため、
ホームページや取り寄せた資料で比較検討することが可能です。
口座維持手数料(事務費用)
iDeCoは、事務関連費用として
掛金から毎月手数料が引かれます。
実施主体である、
国民年金基金連合会には加入資格の確認であったり、
税申告書類の作成などにかかる費用を
支払う必要があります。
また、
iDeCoの口座を開設した金融機関には
窓口業務や掛金の引落しなどの業務にかかる費用、
信託銀行(事務委託先金融機関)には
実際の資産を管理・運用するための費用を、
それぞれ支払う必要があります。
加入時/つみたて時(60歳になるまで・年間)/年金受給時(60歳以降・年)
・国民年金基金連合会:加入資格の審査や税申告書類の作成
2777円/1236円/-
・金融機関(運営管理期間):加入申込受付などの窓口業務、運用商品選定など
全て金融機関により異なっている
・信託銀行(事務委託先金融機関):積立金の管理運用
-/768円/768円・年金振込ごとに432円
金融機関に支払う事務費用は
少ないところでも月167円から
多いところでは月600円以上がかかることから、
費用がいくらかかるか確認が重要です。
また費用が少ないところは資産残高が一定額以上や、
特定の金融機関を指定して口座引落しをする必要がある
など条件が設定されていることもあるので、
チェックしましょう。
資産運用にかかる手数料
定期預金などは運用に手数料がかかりませんが、
投資信託などで資産運用を行う場合、
所定の手数料が引かれます。
運用の対象(株式か債券か、国内か海外かなど)、
運用会社の体制などにより手数料率が異なり、
年0.2%程度のものから年2%以上のものまで
さまざまとなっています。
高い手数料が悪くて、低い手数料が良い!
という訳ではありませんが、
一方で、高い手数料が高い運用成績を保証するわけでもないため、
投資信託の運用方針などを
よく確認のうえ商品選択が重要です。
資産運用の選択肢をチェック
iDeCoでは
定期預金や保険商品などの元本確保型商品と
呼ばれる安全性の高い運用商品と、
中長期的には高い利回りが期待できるものの
元本割れリスクもある投資信託が運用の選択肢となっています。
金融機関では、
10~20本程度ラインナップしているのが一般的です。
ラインナップの違いは、
各金融機関の取組みの違いのため、
ぜひ注目してみてください!
iDeCoの年金の受取方法は?
iDeCoは老後準備をする方法より、
障害年金を受けるような障害の状態になった場合と、
若くして亡くなった場合以外は
原則60歳まで受け取ることができません。
60歳以降に給付金を受け取る仕組みを老齢給付といい、
一人ひとりの生活設計に応じた柔軟な受取方が可能となっています。
まず、
年金か一時金か(あるいは組み合わせるか)の方法が選べます。
年金と一時金を組み合わせる場合は、
金融機関によって金額ベースで自由に指定できる場合と、
25%単位のように指定された割合で
組み合わせる場合があります。
また、何歳で受け取るかを選ぶこともできます。
iDeCoで作った資産はどんなに遅くとも
70歳までには受け取らなければなりませんが
(70歳になると強制的に支給)、
60歳から70歳の間でいつ受け取り始めるかは
自由に決めることができます。
定年を迎えた60歳から受け取っても、
完全リタイア生活がスタートした
65歳から受け取っても良い訳です。
年金で受け取る場合はさらに、
5~20年の間で受取年数を決めたり、
毎年の振込回数を指定することが可能です
(年2回振込か年6回振込かを選ぶなど)。
保険会社が終身年金で給付する商品を提供している場合は、
終身年金として一生涯受け取ることも可能です。
一時金でもらうか、
年金でもらうかによって
税制上の取扱いが異なります。
一時金で受け取った場合は退職金と同様とみなし、
退職所得控除が適用されます。
一方で、
年金で受け取った場合は
公的年金等控除の対象となるため、
国の年金額と合算して税制優遇を受けることになります。
どちらが有利かは個人のそれまでの働き方などで
一概にはいえないことから、
受取時に確認が必要になります。
注意として、
加入期間があまりに短い場合には、
60歳から受け取ることができないケースもあります。
iDeCoや企業型確定拠出年金に加入していた
期間などが合計で10年未満の場合、
数年ほど据置きする必要があるためです。
これによって
50歳代後半でiDeCoに加入した場合には、
60歳まで積み立てたのち、
受取りまで間を置くことになるため
注意が必要になります。
制度の早期、有効活用で老後準備も
さて、資産運用の経験の無い人が
iDeCoに加入しようと思った場合に悩むのは、
掛金の額(積立額)と
掛金での各運用商品への配分方法が多いとされています。
できるだけ積立額を多くしたほうが
老後に向けた資産形成は進みますが、
毎月の家計は苦しくなるのが難しいですよね。
今行っている積立貯金を
iDeCoでの積立てに変えるだけでも
税制優遇の効果は得られますが、
子どもの学費の積立てなどが減ってしまっては
目的が異なるため困ります。
日々の買い物や固定費を見直すなどで、
今までの家計から新たにiDeCo用の積立原資を
捻出されるのも良いかもしれません。
どの金融機関でもiDeCoでの運用商品には
定期預金や保険商品など元本確保型商品が用意されています。
投資信託をどれくらい購入するかどうか、
国内外の株式や債券などの投資対象を
どう組み合わせるかどうかは
加入者が自由に決めることができます。
そのときの第一原則としては分散投資です。
「○○市場は将来有望だ」と思い込み
全財産を一つの投資対象に集中させることは
オススメできません。
国内外のさまざまな投資対象に分散投資を行うほうが、
長い目で見て堅実な資産形成に近づきます。
分散投資の判断が難しい場合には、
一つの投資信託で国内外にバランス良く
分散投資を行うバランス型投資信託というものもあるので、
仕組みや注意点を知った上で、
検討してみてもいいでしょう。
また投資では、
日々の相場に振り回されるのではなく、
中長期的なスパンで見ることも大切です。
一時的にマイナスになっても慌てず、
むしろその時はセール価格で購入できているんだと変換しておきましょう。
長い目で見ると経済の回復により
プラスに戻ることが過去の歴史からは
証明されています。
iDeCoとほかの制度との違い
iDeCoのほかにも税制優遇のメリットを受けながら
資産形成ができる制度や金融商品として、
・NISA(少額投資非課税制度)
・財形年金
・個人年金保険
などがあります。
これらは、制度によって積立額や解約の要件などの違いもあります。
いろいろな制度の特徴を理解し、
隣の人とは異なる自分自身の目的や
理想のライフプランに応じて制度を組み合わせて
使い分けていくといいでしょう。
年間拠出可能額
制限があるのはiDeCoとNISA。
iDeCoについては働き方によって年14.4万円~81.6万円と異なります。
NISAは制度によって、年40万円or年120万円までとなっています。
(来年から制度が変わります)
iDeCoは毎月少額の積立てをコツコツ続けるのに向いています。
積立上限額
一般NISAは5年で最大600万円の元本しか投資できません。
財形年金は元利合計で550万円が上限です。
iDeCoは残高がいくらになっても
資産形成を継続できるのがメリットです。
税制優遇
掛金の積立段階から
所得控除を得られるのはiDeCoと個人年金保険で、
iDeCoは全額が小規模事業共済等掛金控除で
個人年金保険は一定の個人年金保険料等控除があります。
運用益(利息)が非課税となるのは、
NISA、iDeCo、財形年金で、
個人年金保険は受取時に
利益相当分について課税されます。
iDeCoも受取時に課税されます。
購入できる金融商品
NISAはリスク商品のみで
財形年金は一般に預貯金のみ、
iDeCoは預貯金とリスク商品のどちらも購入できる
という違いがあります。
解約要件
解約要件が厳しいのはiDeCoで、
原則60歳まで解約できません。
ほかの金融商品は中途解約ができますが、
解約手数料がかかる場合もあります。
一緒に学んでいきましょう!