経済の話題

20年ぶりの新紙幣発行、今日から流通開始

本日、20年ぶりに日本銀行から新しい「現金紙幣」が発行されます。

新紙幣が印刷される様子を動画で見たことがあるかもしれませんが、実際のところ、現金紙幣は印刷されて束になり、日銀の倉庫に保管されている段階ではまだ「振り出し前の日銀の小切手帳」に過ぎません。市中銀行が日銀当座預金を引き出して新紙幣を受け取った瞬間に、現金紙幣は「保有者の資産」として「日銀の負債」になるのです。

驚くかもしれませんが、日銀の倉庫にある新紙幣が盗まれても、それは「現金盗難」にはなりません。振り出されていない小切手が盗まれても現金盗難にならないのと同じ理屈です(実際には盗まれた新紙幣は使用されるでしょうが)。

新しいデザインの紙幣

今日発行される新紙幣は次のようなデザインです:

  • 一万円札:渋沢栄一(「近代日本経済の父」と呼ばれる)
  • 五千円札:津田梅子(日本で最初の女子留学生としてアメリカで学んだ)
  • 千円札:北里柴三郎(破傷風の治療法を開発した細菌学者)

新しい紙幣は日銀から各金融機関に引き渡され、午前中には手にすることができる金融機関もある見込みです。

現代の貨幣のしくみ

市中銀行は、日銀当座預金を引き出して現金紙幣を手に入れます。我々が銀行預金を引き出して現金紙幣を手に入れるのと同様です。銀行預金は、誰かが銀行からお金を借りることで創出されます。

では、日銀当座預金はどうやって得られるのでしょうか? 市中銀行は、国債を日銀に売ることで日銀当座預金を手に入れます。つまり、初めの貨幣は「国債」なのです。

誤解と真実

かつて、「政府は紙幣を発行できるので財政破綻しない」という主張がありましたが、これは間違いです。紙幣を発行しているのは日本銀行であり、日本政府ではありません。紙幣は「それ自体が価値を持つ貨幣」ではなく、日銀当座預金の「紙版」に過ぎません。

日銀当座預金も現金紙幣も、見た目は違うだけで共に日銀の負債です。そして、日銀当座預金は「国債取引」のために存在します。真の意味で政府が発行する貨幣は国債なのです。政府が国債を発行し、日銀当座預金を借りて支出することで、我々の銀行預金という貨幣が創出されるのです。

財政破綻について考える

我々は「貨幣はモノ」という固定観念に囚われ、「現金紙幣=カネ」という認識から抜け出せないことが多いです。その結果、「政府は紙幣を発行できるので財政破綻しない」という誤解が広まります。

「政府は紙幣を発行できるので財政破綻しない」という主張は直感的でわかりやすいですが、正しくはありません。国民が「日本政府は財政破綻しない」という事実を理解するための入り口としては有効かもしれませんが、本質を理解するにはさらに考えてもらう必要があります。「日本は国の借金で破綻する!」という誤解を解くためには、このような深い理解が必要です。


まとめ

新しい紙幣が発行されることで、私たちは貨幣の本質について再考する機会を得ました。紙幣の発行者は日銀であり、政府ではありません。そして、現金紙幣は日銀当座預金の紙版に過ぎないという事実を認識することが重要です。この認識が広がることで、「日本は財政破綻しない」という理解が深まることを期待しています。