水道の自由化がもたらすリスクとその背景
多くの人が悩んでいるので、今回は「水道の自由化」がもたらす危険性について考えてみましょう。水道民営化法が成立したのは、2018年12月の臨時国会で、十分な議論がなされないまま強行採決されました。この法案は、多くの問題を抱えたまま、国民不在の中で進められてきたのです。
この法律により、自治体が水道の管理運営権を民間企業に譲渡する「コンセッション方式」が採用されています。運営権は企業に渡され、契約期間は15年以上と長期にわたるものですが、契約中に運営に問題が生じても、消費者や自治体が契約内容を変更することはほぼ不可能です。しかも、運営上の問題やトラブルが発生した場合、その責任は自治体に押し付けられ、民間企業が直接対処するわけではありません。
さらに、運営権の売却は地方議会の議決を必要とせず、水道料金の設定も企業側の届け出制となっています。利益を追求する企業が運営する以上、コストがかさむ分、最終的には消費者である国民が高額な水道料金を負担することになります。また、消費者には水道事業者を選ぶ自由がないため、競争が起こらず、結果として料金が高騰する恐れがあります。
実際、堤未果氏の著書『日本が売られる』によれば、ボリビアや南アフリカ、オーストラリア、フランス、イギリスなど、民営化後に水道料金が大幅に上昇した国々の例が示されています。フランスでは24年で265%、イギリスでは25年で300%も料金が上昇しました。このような状況は、日本でも十分に起こりうる問題です。
また、民営化が進むと、利益の多くが株主への配当に回されるため、労働者の賃金が下がるリスクもあります。さらに、一度民営化してしまうと、再公営化するためには多額のコストと時間がかかります。すでに世界中で民営化が失敗し、再び公営化へ戻った例が数多くあります。パリ、ベルリン、クアラルンプール、アトランタなど、37カ国、235都市が公営化へと舵を切り直しました。
水道は国民の生命に直結する重要なインフラです。その管理を利益追求のための民間企業に任せることは、水質の低下や料金の高騰、そして断水などのトラブルを引き起こす可能性があります。これこそ、政府が最も慎重に対処すべき問題ですが、現状ではグローバル企業の利益が優先されています。
この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。