成果主義と働き方改革の課題
多くの人が悩んでいるので、今回は「成果主義」と「働き方改革」による問題点について考えてみましょう。企業側が「労働時間ではなく成果で評価する」ことを提唱してきた背景には、人件費削減の狙いがあります。安倍政権もこの思想を取り入れ、2014年には「自由な働き方」を推進する新たな労働時間制度の導入を目指しましたが、これには多くの問題が隠されています。
成果主義の導入は、個人の成果を重視するアメリカ型の労働文化を基にしています。一見、能力のある個人には魅力的に映りますが、日本の「チームワーク重視」の労働文化にはそぐわない点が多いです。仕事は個人の力だけでは完遂できず、組織全体の協力が不可欠であるため、成果主義はチームの協力体制を崩壊させかねません。
さらに、成果主義の問題は、その「成果」をどう定義するかが曖昧であることです。もし成果を「売り上げ」などの数値だけで評価するならば、ブラック企業が労働者に過剰なプレッシャーをかけ、過酷な働き方を強いる口実に使われる恐れがあります。また、成果主義は雇用形態と密接に結びついており、成果が上がらない労働者は簡単に解雇され、非正規雇用や派遣労働者と入れ替えられる状況が生まれます。
こうした状況が続けば、労働者は長期間のスキル向上やキャリア形成が難しくなり、安定した雇用も失われます。実際に、40代・50代の多くの労働者が定職を失い、「定職難民」として苦しんでいる現状は、この制度の問題点を如実に示しています。
安倍政権の「働き方改革」では、これらの成果主義をさらに推し進めた「高度プロフェッショナル制度」が導入されました。この制度は、労働時間と報酬の関係を切り離すことで、成果を上げることに焦点を当てたものです。しかし、野党や労働組合からは、過労死や残業代ゼロが一般労働者にまで広がる危険性が指摘されています。
「自由な働き方」という理念は、一見すると労働者にメリットがあるように見えますが、実際には雇用者にとって都合が良いだけであり、労働者にとっての自由は保障されていません。サービス残業や過労が残り続ける可能性が高く、特に小中学校の教員などは、すでに給特法により残業代が認められない状況にあります。このような労働者にとって、働き方改革のメリットはまったく感じられないでしょう。
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