なぜ、今本を読むのか—本との付き合い方は「ケースバイケース」
最近読んだ書籍をきっかけに、改めて「読書の重要性」について考えることがありました。ここ数年、読書について質問されることが増えたのですが、私自身が辿り着いた結論は「読書法はケースバイケース」ということです。本を読む目的や個人の特性に応じて、どの本を選び、どのように読むかは変わります。ですが、その中でも役立つヒントとして、濱口秀司氏の著書『SHIFT:イノベーションの作法』の考え方が参考になります。
濱口氏は「全体像を示さず、個々の要素を見せることが学習効果を高める」と述べていますが、これは読書にも当てはまります。読書は単に書かれたことを受け入れるのではなく、読者自身が「考える力」を養い、自分の解釈を加えることが大切です。
経験を抽象化し、新たな時代に活かす
現代は「先が読めない」と言われていますが、これは急速に進むグローバル化や技術革新が原因です。過去の経験をそのまま使うだけでは新しい時代に対応できませんが、経験を抽象化し、その本質を新しい状況に適用することで変化に対処できます。
たとえば、紙の資料をまとめるためにホチキスを使う仕事をしていた人が、ペーパーレス化の進んだ時代でも「情報を整理して伝えることが自分の役割だ」と考えれば、新たな方法を模索し、価値を提供できるでしょう。読書もまた、他者の経験を自分に取り入れ、抽象化することで新しい視点を得る助けとなります。
本は「演奏を待つ楽譜」である
本の魅力のひとつは、その「余白」にあります。つまり、本は完全な答えを提示するのではなく、読者が自分なりに解釈し、思考を深める余地があるということです。著者の友人である渡邉康太郎氏は、本を「演奏を待つ楽譜」に例えています。楽譜が演奏者によって初めて音楽になるように、本も読者によって新たな命を吹き込まれます。
どんな本を選ぶか—「問い」と「答え」の3つのカテゴリー
本を選ぶ際に意識したい基準のひとつが、「問い」と「答え」の関係性です。以下の3つのカテゴリーに分けて考えると、効果的に読書を進めることができます。
- 問いの発見
新しい問いを提示してくれる本。『ソクラテスの弁明』のように、今まで気づかなかった「知ること」とは何かという問いを私たちに投げかけます。 - 答えの発見
既存の問いに対して新たな答えを示す本。ドナルド・ホフマンの『世界はありのままに見ることができない』は、私たちが世界を正確に見ているのかという問いに「NO」と答え、斬新な視点を提供します。 - 既知のリマインド
既に知っている問いと答えを再確認させてくれる本。デール・カーネギーの『人を動かす』は、人間関係の基本的な知恵を改めて思い出させます。
これら3つのカテゴリーを意識しながら、バランスの取れた読書ポートフォリオを作ると良いでしょう。
自分なりの読書を楽しもう
読書に対する悩みを持つ人は多いですが、その多くは「必殺読書法」を求めすぎているからではないでしょうか。読書に正解はありません。途中で本を読むのをやめたり、複数の本を同時に読むことに罪悪感を感じる必要もないのです。
「積読の病」や「実践の病」など、読書に関するプレッシャーを手放し、読書を楽しむことが大切です。自分のペースでリラックスしながら読書に取り組むことで、より深い学びを得ることができます。
「本を読む」とは、自らを生きるということ
ショーペンハウアーは「多読は人を愚かにする」と警告しています。他者の考えにばかり依存してしまうと、自分の思考が弱くなることを懸念しているのです。しかし、読書は自己成長の手段でもあり、重要なのは「熱狂」と「懐疑」をバランスよく持つことです。
ただ本に熱狂するのではなく、自らの視点を持ち、懐疑心を忘れずに読むことで、自己成長を促す読書が可能になります。読書を通じて新しい知見を得ると同時に、自分自身をより深く理解するための手段として、本と向き合いましょう。
良かったら読んでみて下さい!